取締役会議長インタビュー

独立社外取締役 木本 泰行

「取締役会は、環境の変化が事業構造に及ぼす影響を注視し、大局的な視点をもって執行を監督していくことが必要です。」

Q1 : 今年7月に新たに取締役会議長に就任され、また3人の新任社外取締役を迎えた取締役会を率いる議長として、これからの取締役会をどのように運営していくか、抱負をお聞かせください。

A1 : 私が当社の取締役に就任して4年が経過しました。当社は指名委員会等設置会社で、取締役会の構成は、9名のうち6名が社外取締役であり、また取締役会議長は独立社外取締役が務めています。過去4年間の取締役会については、社外取締役を中心に非常にフランクで自由闊達な議論が行われてきたと感じています。そうした良さを大きく変えるべきではないと考えています。

また、我々はともすれば「当社だけが固有の問題を抱えている」というようなことを考えてしまいがちですが、そんなことはなくて、世の中に共通する問題や課題が多くあります。そして、当社の取締役会は、大局的な観点から当社の課題を位置付け認識して、それをオープンに議論している、という運営がなされています。

当社の取締役会メンバーは、企業経営経験者、学識経験者、また2名の外国人を含めて、多様なバックグラウンドを有しており、そこできちんと議論できることが、グローバルな事業展開を監督する上で支えとなっています。これからもそうした運営を是非続けていきたいと考えています。

Q2 : 世の中共通の問題、というお話が出ましたが、今はまさに新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けており、当面不透明な事業環境が続くものと思われます。そうした中で当社グループの現状と課題について、取締役会としてはどのように捉えていますか?

A2 : もちろん新型コロナウイルス感染拡大が当社の事業に与える影響は無視できませんし、感染防止対策の徹底など人の安全・健康を守ることや早期の業績立て直しなど、足元の状況に対して対策を考え実行していくことは目下の最重要課題です。

しかし、短期の対応だけに目と心を奪われていてはいけません。当社グループの主要事業分野である建築と自動車産業では、新型コロナウイルス感染拡大以前から需要に変化が生じ始めていました。取締役会は、そうした事業環境の変化が、当社グループの本質的な事業構造にどのような影響を及ぼすのか、ということに常に目を向けて、執行陣がその課題を把握し改革に向けて正しい方向に向かって取り組んでいるのか、大局的に議論し監督していく必要があると考えています。

Q3 : 当社のコーポレートガバナンス体制について、取締役会として実効性をどのように高めていくか、お聞かせください。

A3 : 私は、コーポレートガバナンスには二本の重要な柱があると考えています。第一の柱は、CEOを中心とした執行の内部統制です。当社は、全世界で事業を展開するグローバル企業です。文化、言葉、考え方や仕事の仕方などが多様な人々を、コミュニケーションを通じて束ねていくことが重要です。現場からの意見や情報がトップまで上がっているか、またトップの考えが現場まできちんと伝わり浸透しているか、その間で必要な議論が行われているか、そうした組織・体制が機能して、コミュニケーションが十分に行われていることが非常に大事だと考えています。

それを補完するのが第二の柱で、社外取締役を中心とした取締役会や指名・監査・報酬各委員会により、内部統制体制が適切に運営され機能しているのかを管理・監督する、ということだと考えています。

コーポレートガバナンスというと、ともすれば第二の柱のような「形式」を作ることに目が向けられがちですが、そうではなくてやはり第一の柱である内部統制力がなければ実効性は上がりません。

当社では、第一の柱と第二の柱のバランスは取れていると思います。取締役会や各委員会の組織はしっかりしており、また自由な意見交換や議論を阻害する要因もなく、監督体制としてはよくできていると思います。執行の内部統制体制も、ピルキントン買収後10数年が経過し、仕組みだけでなく実効性も向上しています。ただ、まだ改善の余地はあり、努力が必要だと考えています。日常業務として、トップと現場の距離を縮める努力が必要です。そして、そのことを言い続けてモニターするのが取締役会の役目であると考えています。

Q4 : 中期経営計画(MTP)フェーズ2が2020年3月期をもって終了しました。最終年度では市場環境の悪化に加えて新型コロナウイルス感染拡大の影響も受け、財務目標は未達に終わりましたが、取締役会としてMTPフェーズ2についてどのように評価し総括されていますか?

A4 : これだけ環境変化が激しい時代にあっては、3年先の事業環境を適確に見通し、それを数値目標として計画することは困難な状況にあると思います。当社のMTPフェーズ2も数値目標が未達に終わったことは、非常に残念であり遺憾なことですが、ただそれだけで全てが駄目だった、間違っていた、という評価をする必要はありません。

MTPフェーズ2を評価するにあたって一番重要な要素は、3年間でどれだけ構造改革への取り組みが積み上げられたか、ということです。そうした観点からは、計画達成に向けた努力は十分に評価するものの、取締役会が期待した水準には至らず、更なる改善努力が必要である、という評価になるでしょう。

当社グループの場合は、建築と自動車という需要環境の変化に左右されやすい事業構造ですが、それをどのように改革するのか、そのための手立ては何なのか、課題は残っています。構造改革を実行するにあたっては、新規事業の育成を含めた成長への取り組みも重要ですが、既存の主力事業分野において、どれだけ地道な努力を実行し積上げて結果を出せるのか、ここが一番重要です。そして、そうした課題解決のための改革プランを新しい中期経営計画の根幹として組み込んでいく必要があると考えています。

Q5 : それでは最後に、今後の当社の目指すべき方向性についてお考えをお聞かせください。

A5 : 「ガラス」という素材は、世の中にとって必要な素材であり続けるでしょうし、従って市場もある日突然無くなるというものではありません。企業として戦略を考えていけば、生き残る道はあるはずです。

但し、従来型の素材メーカーとしての生き残り戦略だけでは十分ではありません。やはり新しい用途開発、市場開発が必要です。「ガラス」素材はいろんな可能性を秘めています。光や熱を制御することができる、導電膜を付けることで電気を通すことができる、リサイクル性に優れた無機材料である、といった特長を生かして、IT、医療や環境といった分野での用途拡大も期待されています。

新型コロナウイルス感染症拡大の中で、まずは足元の対策や業績改善が最優先事項ではありますが、先ほども述べました通り、新しい中期経営計画に、主力事業分野を中心とした本質的な構造改革を盛り込んでいくと共に、「ガラス」という素晴らしい素材にかかわる技術を核とした新たな成長戦略を描いていくことが必要です。取締役会としても執行陣との議論を通じて、当社グループの持続的成長と企業価値の向上のために、積極的に取り組んでまいります。