経営方針、経営環境及び対処すべき課題

1. 当社グループを取り巻く経営環境と対処すべき課題

今回の新型コロナウイルスの世界的な感染拡大は、世界の人びとの生命を脅かしただけでなく、世界の経済にも大きな影響を与えています。世界経済は、場合によっては複数年にわたって生産と消費の両面で大きな制約を受ける可能性もあります。当社の基盤事業である、自動車用ガラス及び建築用ガラス事業も大きな影響を受けており、今後の需要動向をよく見極めていく必要があります。また、中長期的な板ガラス産業の底流としては、新興国のガラスメーカーの増加に伴う製品の汎用品化と価格低下が進んでいます。一方で、環境保護や健康維持への貢献や、100年に一度と言われる自動車分野での技術革新に応えることのできる新しいガラス製品への期待が高まっています。さらにはIT革命、デジタルトランスフォーメーションなどの潮流に加えて、大きく変わることが想定される「コロナ後の世界」の人々の生活や働き方においては、ライフサイエンス分野やIoT・クラウド分野でのガラスへの期待もより一層拡大していくと考えられます。

当社は、これらのニーズの変化を、事業構造を大きく転換する「イノベーション」のチャンスととらえており、この変化に素早く、フレキシブルに対応するとともに、新しい事業環境に適応すべく事業体制の転換を図っていく所存です。

2. 経営方針

当社は2018年に創立100周年を迎え、それを機に新たなNSGグループ経営指針「Our Vision」を策定しました。Our Visionは、以下の通り、「使命:NSGの存在意義」、「目指す姿:NSGのなりたい姿」および「コアバリュー:働き方の基盤となる価値観」から構成されています。

ガラス技術で世界に変革を

当社グループは、Our Visionを経営の指針とし、お客様と社会が求める多種多様なニーズに対して従来のガラスを超えるプラスアルファの価値やサービスを迅速かつ適切に提供することにより、持続的成長可能な社会の実現を目指しています。

3. 長期戦略ビジョンと中期経営計画(MTP)フェーズ2、およびその振り返り

(1) 長期戦略ビジョンと中期経営計画(MTP)フェーズ2

当社グループは、2014年5月に発表した長期戦略ビジョン「VAガラスカンパニー(VAとは英語のValue-Addedの頭文字に由来し高付加価値を意味)への変容・変革」に基づき、2018年3月期から2020年3月期までの3年間を期間とする「中期経営計画(MTP)フェーズ2」(以下、「MTPフェーズ2」)を策定しその遂行に取り組みました。 MTPフェーズ2においては、基本目標を「財務サステナビリティの確立」および「VAガラスカンパニーへの変容・変革の開始」と定め、売上高営業利益率(ROS):8%以上※、ネット借入/EBITDA比率:3倍以下とする財務目標を設定しました。

※注:個別開示項目及びピルキントン社買収に係る償却費控除前営業利益をベースに算定。

(2)MTPフェーズ2の振り返り

MTP開始(2015年3月期)以降、MTPフェーズ2において収益性は着実に改善し、VA化が進展しました。成長施策では、VA No.1戦略の推進により、建築用ガラスでのオンライン・コーティング分野での優位性の確立や高付加価値自動車用ガラスの受注増加が進みました。

財務面では、2017年にA種種類株式を発行し自己資本の改善を図るとともに、金融費用削減目標を一年早く達成し、6期ぶりの復配を実施するとともに、当期利益の押し上げにも寄与しました。

成長をさらに加速させるため、戦略投資としてベトナムおよび北米において太陽電池パネル用ガラスの製造設備と、将来有望な新興市場である南米のフロートガラス工場(アルゼンチン)の増設を決定しました。このうちベトナムの設備は設置が完了し、2020年2月に稼働を開始しています。

新規事業の育成・新しい顧客価値創造の取り組みを加速するため、2018年7月にはビジネス・イノベーション・センター(BIC)を立ち上げました。

上記の通り、2019年3月期までは順調に利益改善が見られた一方で、2020年3月期に入ってからは欧州を中心とした自動車生産の急減、建築用ガラス市場の需給バランス悪化の影響を受け、最終年度である2020年3月期におけるMTPフェーズ2の財務目標は達成できませんでした。

(3) 前中期経営計画(MTPフェーズ2)の振り返りを踏まえた課題

上述の結果を踏まえたMTPフェーズ2の振り返りにおいて、社内の課題と対処を以下の通り認識しており、今後の計画に反映させていく予定にしています。

MTPフェーズ2の振り返り 対処方針
景気変動に強い事業体質づくり
- VA売上比率は高まる(46%)も、依然として既存分野の製品が多く、価格競争にさらされやすい構造
 
- 固定費比率の高いコスト構造からの転換が不充分
 
・ ナンバーワン、オンリーワン製品の増加
 
・ よりアセットライトな事業構造への転換
新製品上市によるトップライン成長
- BIC設置によりスピードアップを図るも、成果はいまだ不十分
 
・ BICを含むR&Dリソースの増強
財務基盤の強化
- A種種類株式発行による安定化を図るも、より安定的な財務基盤の確立に遅れ
・ 事業収益力の強化
・ 減価償却費以下に投資を抑制
・ ノンコア事業・資産の売却

4. 今後の方針と事業計画

(1) 新型コロナウイルス感染拡大に伴う課題とその対処

目下の最重要課題は、全世界的な新型コロナウイルス感染拡大の事業影響への対処です。

現時点で新型コロナウイルス感染拡大の完全な終息の見通しが見えない中、当社グループの主たる事業領域である建築用ガラス事業や自動車用ガラス事業においても大きな影響を受けています。

当社グループでは、これらの状況を踏まえ、従業員の安全・健康を第一優先とした上で、各地域の現地経営陣が迅速な意思決定を行える体制を作り、以下の緊急対策を実施しています。

従業員と家族の安全対策
  • 従業員と家族の安全を第一優先に考えた勤務体制及び職場環境の構築
  • 各国政府方針に準拠したグループ内の感染拡大防止ガイドライン策定と遵守
資金対策
  • 手元現金や未使用の融資枠の確保と追加資金調達の実施
  • 一部の最重要プロジェクトを除く新規設備投資の凍結
  • 可能な限りの経費支出の削減と公的補助金の利用
生産対応
  • 顧客の需要動向に対応した一時的な生産調整や一時帰休
  • 需要の回復時には、市場の立ち上がりにフレキシブルに対応し生産を再開

今後も新型コロナウイルス感染状況や需要の変動を注視し、これらに備えた事業体制を検討・構築していきます。

(2) 財務基盤の強化

安定的な財務基盤の回復は当社の喫緊の課題と認識しており、2020年3月期において悪化した自己資本の早期回復に向けて、以下をはじめとする様々な施策を実施します。

  1. 事業収益力の回復・強化

    収益力のある事業をより強化するとともに、低採算事業については抜本的なコスト構造の変革を実施します。また、ビジネス・イノベーション・センターを含む研究開発活動をより強化することにより新規事業の育成を加速します。これらを通して事業収益力とキャッシュ・フローの創出を図ります。

  2. 有利子負債の削減

    投資の抑制、ノンコア事業・資産の売却により、有利子負債の削減を進めます。

(3) 新中期経営計画と長期的方向性

2021年3月期から開始する新中期経営計画は、新型コロナウイルス感染拡大の影響により事業環境の見通しが不透明になっていることから、その公表を一旦延期することとしました。

一方で、当社グループが目指すべき方向は、以下の通り、不変であると考えています。

先進の発想で世の中に変化を起こすイノベーションカンパニーへ

  • 安定的な財務基盤の確立
  • 安定的に会社を支え続ける基盤事業の確立
    (戦略投資の成果、VA化推進継続、低採算事業の改善)
  • BICを中心としたグループの成長を牽引する新規事業の育成
  • 収益性・資本効率と成長性を軸とした事業ポートフォリオ転換
  • リーンでアジャイルな組織・文化の醸成

新型コロナウイルス感染拡大終息後の世界の経済・社会環境は大きく変わることも想定されますが、環境への貢献(太陽電池パネル用ガラス、ZEB/ZEH等の省エネルギーガラスなど)、健康への貢献(PCR検査機や抗菌ガラスなど)、テレワークなど通信需要拡大への貢献(光通信デバイスなど)といった製品分野は、当社グループが強みを持ち、社会の変化に関わらず必要とされる注目すべき領域であると考えています。

現在のような不確実、不安定な社会・経済状況下においても、経営指針「Our Vision」に基づき、グループ一丸となって持続的に成長できる事業構造への変革を図ってまいります。

(4) 持続的成長の実現に向けた新しいマテリアリティ

当社グループでは、経営指針「Our Vision」に基づき、新中期経営計画策定の過程で、新しくマテリアリティを定義しなおしました。 (詳細はこちら)