株主の皆様へ

株主の皆様におかれましては、平素より格別のご高配を賜り、厚くお礼申し上げます。

ここに当社グループの第154期(2019年4月1日から2020年3月31日まで)の概況についてご報告申し上げます。

はじめに、新型コロナウイルス感染症で亡くなられた方々のご冥福をお祈りいたしますとともに、罹患された方々をはじめ、甚大な影響を受けられた皆様に心よりお見舞申し上げます。また、感染拡大防止に尽力されている医療関係者をはじめとする多くの方々に心より敬意を表します。

2020年3月期の概況から、新型コロナウイルス感染拡大の影響による当社グループの経営状況の変化と今後の方針について、皆様にご報告申し上げます。

2020年3月期の総括

当社グループの業績は、2020年1月以降の新型コロナウイルス感染拡大で一層厳しさを増しました。

自動車用ガラス事業では、為替変動や欧州での乗用車生産台数減少の影響などにより売上高、営業利益共に前期を下回りました。建築用ガラス事業では、為替変動の影響に加え、欧州、米州、アジアの市場環境が悪化したこと、さらに新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり、年度末にかけて売上高、営業利益共に大きく減少しました。一方で、太陽電池パネル用ガラスの需要は引き続き堅調に推移しています。2月にはベトナムにおいて2基目となる太陽電池パネル用ガラスの製造ラインをスタートさせました。高機能ガラス事業では、一部の事業での厳しい市場環境の影響を受け、売上高、営業利益ともに前期を下回りました。また、新型コロナウイルス感染拡大による悪化影響を受けましたが、年度末にかけてある程度安定した状態に戻りました。ファインガラス事業の業績改善が進みました。

その結果、当期の売上高は5,562億円(前期は6,128億円)、営業利益は212億円(前期は369億円)となりました。また個別開示項目費用として240億円を計上しました。これには自動車用ガラス事業の欧州及びその他の地域ののれん及び無形資産の減損損失117億円が含まれています。親会社の所有者に帰属する当期損失は189億円(前期は133億円の利益)と前期から大幅に悪化しました。

2021年3月期の取り組み

新型コロナウイルス感染拡大による当社グループ業績への影響は、2021年3月期、特に第1四半期は2020年第4四半期からさらに拡大すると想定しています。第2四半期以降は、需要は全体として徐々に回復に向かうと見ていますが、回復の時期や程度は未だ明確ではなく、予断を許さない状況が継続すると見込んでおります。

こうした状況に備えて、2020年3月期末においては現預金残436億円、未使用融資枠残655億円を確保しておりますが、追加の流動性資金の確保に向けて金融機関と協議を行っています。今後の事業環境の厳しさを踏まえた対応策としては、まず、在庫削減等の運転資本の管理の徹底、戦略投資・緊急案件以外の設備投資の可能な限りの凍結など現金支出の最小化を進めて参ります。

また、役員報酬の自主返上も含め徹底した支出削減を行います。製造部門においては、従業員の安全・健康を確保しながら、複数の工場での生産統合や縮小、休止などの対策を検討・実施して参ります。さらに、ノンコア事業・資産の売却も継続的に検討・実施します。2021年3月期通期の業績予想及び新中期経営計画については、新型コロナウイルス感染拡大の短期的かつ中期的な影響が見通せる段階で改めて公表する予定にしています。

今後の方針と事業計画

安定的な財務基盤への早期回復は当社グループの喫緊の課題です。そのために、以下の施策を進めることにより、早期に持続可能な当期利益とキャッシュを生みだす事業体質を作り上げていきます。

  • 既存事業のコスト構造の抜本的変革、VA戦略(VAは英語のvalue-addedに由来し高付加価値を意味)の一層の加速により早急に収益力を改善する

  • 成長分野及び新規事業分野の拡充を図り、早期の収益貢献を実現する

  • 間接経費の削減、投資抑制、ノンコア事業・資産の売却等により有利子負債の削減を図る

中期的には、新型コロナウイルス感染拡大終息後の世界の経済・社会環境は大きく変わることを想定し、継続・拡大させる事業と見直す事業を明確にし、事業構成を変えていくことを目指します。今回の「コロナ危機」を契機に、環境・健康・衛生などがより重視される社会に変化すると考えており、当社が持つ、太陽電池パネル用ガラス、エネルギーの出入りをコントロールできる調光ガラス、抗菌・抗ウイルスガラス、PCR検査機、高速大容量通信用の各種デバイス用ガラスなどのVA製品やVA技術は、今後「コロナ後の世界」でニーズの高まりが期待されます。

直近では、PCR検査機「PicoGene®PCR1100」が世界数か国の保健機関や企業・大学から引き合いを受けています。抗菌・抗ウイルスガラスの分野では、既に販売を開始している「ウイルスクリーン™」は、優れた抗ウイルス効果により、病院などの衛生的な環境が求められる分野のほか、各種タッチパネルなど幅広い用途が見込まれます。加えて、今般、当社の新たな抗ウイルスガラス開発プロジェクトが、英国の「新型コロナウイルス感染症緊急対応イノベー ション基金」の公募に参加し、助成金を獲得しました。新たな抗ウイルスガラスの開発をさらに加速させます。

このような事業機会を捉え、アセットライトな事業構造への転換、マーケット志向の商品開発や販売体制の構築、またIT技術を活用したリーンでアジャイルな組織作りによって、より景気変動に強い企業体質へと変革を図っていきます。

持続的成長の実現に向けて

当社グループでは、従業員の安全と健康を最優先とし、新型コロナウイルス感染防止策を実行しております。ソーシャルディスタンス、うがい手洗いの励行、マスク着用、在宅勤務の実施、出張の制限など世界各地の行政などの指導に従いながら、ビジネス効率を高める工夫に努めております。特に、テレワーク活用は「働き方改革」にもつながり、より安全で安心な働きやすい労働環境の実現に向けて引き続き取り組みを進めて参ります。

また、当社グループは2019年8月に策定した温室効果ガス削減目標を、温室効果ガス排出量(Scope1 及び Scope2*)について2030年までに2018年対比で21%削減すると定めました。この目標数値は、パリ協定が目指す「産業革命前からの気温上昇を2℃未満に抑えるための科学的根拠に基づいた目標」としてSBTイニシアティブ (SBTi**)に認定されました。これまでガラス生産量1トン当たりのCO2排出量を毎年1%削減することを目標としていましたが、2%に目標を上げ、事業活動に伴うCO2排出量の削減と、革新的なガラス製品の提供により、気候変動リスクの低減に貢献して参ります。

配当について

当期の普通株式の期末配当につきましては、当社グループの業績、財務状況等を総合的に勘案し、誠に遺憾ではありますが、その実施を見送らせていただくことといたしました。株主の皆様には、誠に申し訳なく、深くお詫び申し上げます。当社グループは、配当が株主の皆様にとって重要なものであることを認識しており、今後少しでも早く復配できるよう収益改善に全力を傾けていく所存であります。 株主の皆様におかれましては、引き続きご支援、ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。

*Scope1: 事業者からの直接排出(製造工程における燃料の使用等) Scope2: エネルギー起源の間接排出(製造工程における購入電力等)

**SBTi は、CDP(旧カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)、国連グローバ ル・コンパクト、WRI(世界資源研究所)及びWWF(世界自然保護基金)による共同イニシアティブで、気候変動リスクの低減に向けて企業に対し、科学的知見と整合した温室効果ガス削減目標の設定を推進しています。

2020年7月
日本板硝子株式会社
代表執行役社長兼CEO
森 重樹