経営戦略と人材戦略との連動

NSGグループでは、2018年に設定された経営指針「Our Vision」に基づいて定義されたマテリアリティの中に、中長期的な企業の持続的成長と持続的社会の実現への貢献を両立するために認識すべき重要課題の一つとして「人材」を設定しています。人材は会社の事業活動を行う上での必要欠くべからざる「資本」です。NSGグループは、社員が事業活動を通じて「成長」し、「働く喜び」を得られる企業グループであり続けるように企業文化、人事制度、職場環境を整えることが「人的資本投資」であると考え、CHROを設置してこの投資の効果・効率性を高めて会社を成長させ続けていく「人的資本経営」に取り組んでいます。

「Our Vision」に沿った人事戦略として、「シニアマネジメント層の強化およびOne Team化」「オープンで透明な対話型の組織運営」「リスキリングを含めた成長機会の提供」「“新しいアイデアの源泉”としての人材多様性の推進」「Groupへの絆を深めるコミュニティー意識の醸成」「人材の確保・育成・採用に資する評価・報酬体系の構築」の6本の柱を設定しています。

人権尊重、ウェルビーイング

NSGグループは、経営理念「Our Vision」で設定している6つの「コアバリュー」の1つ目に「人を尊重し、人を活かす」ことを掲げています。これは住友の理念である「事業は人なり」に通じるものであり、1918年の設立以来重んじてきている価値観です。

また「コアバリュー」の2つ目には「信用を重んじ、誠実に行動する」ことを掲げており、これを具現化した「NSGグループ倫理規範」は、人権の尊重、安全・健康、行動への当事者意識、オープンで全員参加を促すコミュニケーションをすべての社員に求められる行動として規定しています。

「倫理規範」は、国際的に宣言された人権遵守を明確に示しています。NSGグループの雇用機会均等ならびにダイバーシティポリシーは、人種、肌の色、信条、宗教、信仰、年齢、性別、性的指向、国籍、障害の有無、労働組合への加入、政治的所属、またはその他の法律によって保護されているあらゆる立場に基づく差別の禁止を目的としています。

安全・健康についてもNSGグループの社員として最優先されるべき事項として取り組んでいます。健康については、これに関する個人情報の取り扱いが国や地域によって文化的、法的な相違があるため、現時点では日本に限定した「健康経営」として取り組みを進めています。その内容については追って別項でご紹介いたします。

これら人権尊重、ウェルビーイングが人事戦略の前提となるものであり、これを踏まえて6本柱が策定されています。

1. シニアマネジメント層の強化およびOne Team化

人事戦略の1つ目の柱は「シニアマネジメント層の強化およびOne Team化」です。NSGグループは2021年5月に発表した中期計画「リバイバルプラン24」において、「3つの改革」の一つとして企業風土改革を掲げています。しかし2022年1月に実施した従業員サーベイ「Your Voice」では、回答者の3分の1が現在の会社のカルチャーやリーダーの行動様式に満足していないという結果となりました。

NSGグループのシニアマネジメントメンバーは2022年10月に英国レイサムに集まり、グループの企業風土改革をどうサポートし推進していくかについて話し合うためのリーダーシップワークショップを開催しました。文化を変えるためには「文化を変えよう」と言うだけでなく自分たちの行動を変える必要がある、またグループのいかなる変革もまずトップから始めなければならない、という考え方のもと、「シニアチームが自分たちの行動を変える」と宣言した「リーダーシップ行動憲章」を採択しました。行動憲章は以下の10の行動宣言からなります。

この行動憲章を制定する議論ではさまざまな意見が出されましたが最終的には全員が合意し、その過程も「One Team化」につながっていると考えています。シニアマネジメントが率先垂範して行動変容しているかどうかについて、2023年に実施予定の第2回「Your Voice」において社員の声を聞く予定です。シニアマネジメントが一体となって機能するためには、マネジメントメンバーの後任者計画(サクセッションプラン)が策定され現実的なものになっていることが重要です。社外取締役が委員長を務める指名委員会で毎年、準備状況の促進、潜在力の開発、懸念点やギャップの明確化等、プランの質の向上のために取られる可能性のあるオプションや活動等についての議論が行われています。

2. オープンで透明な対話型の組織運営

NSGグループでは、「企業文化」を社員一人一人の考え方や行動の傾向の集大成と定義し、マネジメントと現場、上司と部下、同僚間における「対話」(ダイアローグ)を通して考え方や行動の変容を促すことで、強い企業文化を醸成することができると考えています。その前提として社員が必要な情報にアクセスし自分の考えをオープンにすることが、対話の質を向上させ、社員のパフォーマンス向上や成長、やりがいにつながるとともに、NSGグループとしてのアウトプットを向上させることになります。そのようなエンゲージメントの高い環境を作り上げていくことを課題として設定しています。

2023年4月に社長兼CEOに就任した細沼は「4つのF」を掲げています。これは「Flatな組織」「Frankなコミュニケーション」「Fastな意思決定」「職場におけるFun☺」からなるもので、特に「Flat」「Frank」は「オープンで透明な対話型の組織運営」を進めていくうえでの大事な要素です。

NSGグループでは、2022年から「NSGリスニング・ストラテジー(傾聴戦略)」を進めています。従業員意識調査「Your Voice」では「Let's Focus」「Let's Talk」セッションを設けました。「Let's Focus」セッションでは各部門やファンクションのグローバル各リーダーに提供された調査結果をもとに、28か国すべてにおいてそれぞれのチームメンバーと結果を共有し、「Let's Talk」セッションにおいてチームメンバーは対応アクションを議論しました。各部門や職場が主催する「Let's Talk」セッションでの対話を通じて社員の考え方や行動の変容を促すとともに、チームメンバーから出た変革に向けたアイデアや提案を職場環境の改善に結びつけています。2023年度の人事戦略も対話の中から出た声を反映して策定されています。

中期ビジョンと中期経営計画RP24の策定後は、グローバルリーダー達との対話を目的としたNSGサミットや、各地域の幹部社員との対話を目的としたタウンホールミーティングを開催し、NSGグループの進むべき方向についての理解・共有に努めています。上司部下での効果的な対話を実現するために、部下に対するコーチングやフィードバック能力が優れたマネージャーの育成に取り組んでいます。このような活動を通して改革に向けた社員の自己肯定感や自己効力感を強めていくことが、職場環境を改善しNSGグループを活性化させていくことにつながると考えています。

3. リスキリングを含めた成長機会の提供

2018年に、グループのビジョンおよびバリューを支援する広範な人材戦略の一貫としてタレントマネジメントを導入しました。人材の人事記録やデータをグループ共通のタレントマネジメントシステムへ移行させ、同時にすべての管理職に対して新しい人材育成プロセスについての包括的なトレーニングを提供しました。2019年には、社員に対するパフォーマンスレビューの議論をより深化させる目的で、NSGグループコンピタンシーモデルを導入しました。これらによってNSGグループの人材の透明性が高まり、事業部門や国やリージョンを超えた全社的な視座でのマネジメントが継続的に行えるようになりました。

2024年に向けた人的投資の目標は、タレントマネジメントを職場における人材育成に定着させ、マネジメントの各階層において、中期経営計画RP24を実現する能力を持った変革リーダーの育成を促進することに置きました。RP24の実現の鍵となる「顧客重視」、「迅速な意思決定とアクション」、そして「困難な課題の克服」に向けたリーダーの行動変容に関わりの深いNSGグループコンピタンシーモデルの各項目を階層別にリーダーの能力開発目標に置き人的投資を行います。併せて改革に必要なデジタル化、マーケティング、新規事業開発といった分野のリスキリング教育も社員に対して実施します。

研修においては、対面式の教育形式だけでなくオンラインのバーチャル教室、アクションラーニング、コーチング等の育成活動を適切に組み合わせた形式へと移行させています。

階層別の育成においては、特にグローバル経営人材の次の階層であるリージョン人材の育成活発化に注力します。各リージョンにおいて定期的な人材会議を開くことで、将来のグローバルリーダーとなる人材の発掘と育成を強化します。特に、グループ本社の置かれている日本では現在、グローバルレベルの経営人材候補としてサクセッションプランに登録されている人材が減少傾向にあるため、2022年より20代から30代の若手の中から向こう10-15年以内に国を超えてリージョンまたはグローバルレベルの経営人材へ促成育成を目的としたAP(Acceleration Pool)会議を開催し、発掘した人材の個別の育成計画(Individual Development Plan : IDP)を作成して、対象者に部門横断的な異動、特別研修、プロジェクトチームへの参加等の施策を行っています。

4. “新しいアイデアの源泉”としての人材多様性の推進

NSGグループの企業文化改革には、多様性を認め受け入れる風土の醸成が不可欠です。2023年、NSGグループは従来のInclusion & Diversity (I&D) 推進のための基本ステートメントをより向上・加速させるために、「均等な機会提供」から「環境・状況に応じた最適な機会供与」に進化・発展させた新たなDiversity, Equity & Inclusion (DEI) ポリシーを策定しました。女性活躍や障がい者雇用の促進だけでなく、世代の多様性、個々人のキャリアにおける多様性等、さまざまな観点での多様性について議論・対応してまいります。NSGグループは事業をグローバルに展開しており、多様な国・地域・文化の人材を持つことが大きな強みであるととらえています。それらを融合し「新しいアイデアの源泉」としていくために、後述するような各地の活動を全面的にバックアップしていきます。

5. Groupへの絆を深めるコミュニティー意識の醸成

新型コロナウイルスの感染拡大によりリモートワーク等の多様な働き方が促進されました。このことは、従来の働き方におけるコミュニケーションや人との関わり方の重要性を改めて認識させるきっかけともなりました。対面型イベントに対する制約が大きく緩和された今、それらのイベントを復活、充実させ、部門をまたいだコミュニケーションを促進させていきます。日常的な業務とは異なる経験を通じてNSGグループへの帰属意識が高まり、個々の社員が自身の業務に対する責任感、主体性を強めることにつながると考えています。社員だけでなくその家族や地域との交流を図る機会にもなります。オンラインには遠く離れた社員同士が気軽につながれるという大きなメリットがありますので、効果的に組み合わせて多様なコミュニケーションを実現していきます。なお2022年度にはNSGグループ全体で300件近くのイベントが実施されております。

6. 人材の確保・育成・採用に資する評価・報酬体系の構築

2018年にNSGグループは、社員の業績評価制度をそれまで5段階の相対評価から4段階の絶対評価制度に変更しました。制度導入から5年目を迎えるにあたり、導入当時の経営環境と現状の変化を照らし合わせながら、社員の育成をさらに促進し改革に向けたエンゲージメントを高めることを狙いとした運用に見直していきます。具体的には、社員の改善が必要な部分についての評価を本人がポジティブに受け止められるよう制度的な表現の見直しを図るとともに、上司の部下へのコミュニケーションスキルを向上させることにもセットで取り組みます。また、当グループにとって必要欠くべからざる技能や経験をもった人材により適切に報いる報酬体系の導入を検討しています。そのような人材のリテンションを高めるために、マネジメントトラックとは別の視点で専門職のキャリアトラックを設定し、会社への貢献を適正に評価してリテンションを高めることができるような専門職のキャリアトラックとそれに応じた報酬体系を導入検討しています。

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