光通信用無反射コート技術「GRINコート(グリンコート)」の開発について

Date
2001年 11月 13日

日本板硝子株式会社(社長 出原洋三)は、光部品の接続に初めて応用した無反射コートの新技術「GRINコート」の開発に成功しましたので、その概要を以下の通りお知らせいたします。


1.GRINコート技術
原理は、屈折率分布を利用した新しい光通信用の無反射コート技術であります。

【膜の断面SEM写真】


下地: GRINコート
膜: 光ファイバーチップ
屈折率の傾斜により、膜には縦方向にグラデーションがついている。

光通信では屈折率の異なるレンズやファイバーなどの光部品同士を組み合わせて使いますが、それらを直接接合させる場合は、境界面での光反射を無くす必要があります。従来の光干渉を用いた反射防止膜では、単一波長のみ反射を防止することが出来ましたが、本技術を用いれば、光通信のポンプ光から通信光まで使われるすべての波長で、一括して反射を無くすことが出来ます。この膜は、複数の酸化物を混合し、その混合組成比を膜厚方向に精密に制御することにより実現できました。屈折率の変化をある特殊な関数群に設定することで、前述の波長無依存な無反射膜が形成できます。

2.実用化
この膜を、当社の通信用コリメータレンズ(セルフォックマイクロレンズ)の端面に形成し、光ファイバーや導波路など光部品との直接接合を行うことで、部品の組立工程が大きく簡略化できる可能性があります。

【GRINコートを用いた光部品の接続例】


上段左: マイクロレンズ
右: 光ファイバーチップ
下段: 今回のGRINコートを用いて上二つを接続した様子。接着にはUV硬化樹脂を使用。

当社の「フィルタ オン セルフォックマイクロレンズ」と合わせて、光モジュールのコストダウンに大きく貢献できると考えております。

【お問い合せ先】
総合企画室 広報グループ(青池)
電話 03-5443-9505

 


 

 光エレクトロニクス分野の権威であります東京工業大学名誉教授/日本学術振興会理事の伊賀健一先生のコメントを頂いております。

(ご参考)
グリンコートの原理は,屈折率を徐々に光の伝搬方向に変えて反射を低減しようとするものであり,断熱法と呼ばれる。いきなり壁にぶつかることを避け,スロープで緩和しながら異なるところにつなげるという物理現象を巧みに用いるものである。一方,めがねの反射防止膜などに使われる方法は干渉法と呼ばれ,ある波長に対しては原理的に無反射にできるものの,広い波長範囲での使用には問題が多かった。本技術は,光通信分野などでのかかる問題点を解決するものである。

これまでの背景としては以下のようなものが知られている。電気回路では,特性インピーダンスを徐々に変えて異なる線路を無反射で接続するなどがある。光学分野では,ガラスレーザの表面屈折率を,母材ガラスから空気にいたるまで徐々に変えて反射を防ぐなどに用いらている。

今回開発されたグリンコートは,このような原理を屈折率の異なるレンズと光ファイバのような光学部品の接続面での反射を防止する目的で発明された実用技術である。干渉法では,対象となる光の波長の付近のみで無反射になるのに対し,この方法では,広い波長範囲でこの現象が起こるので極めて実用的である。

原理は一般的でありながら,この方法を光ファイバのような光部品の接続に使用する技術については必ずしも既知ではななかった。今回の発表では,その設計,製造法にいたる技術を開発したもので,工学的価値が非常に大きい。光通信分野における朗報といえよう。

東京工業大学名誉教授/日本学術振興会理事 伊賀健一(専門:光エレクトロニクス)